【短編】若妻の電話
淳子は思った。
先週の電話で、きょうも夫がいないことを
浩司に告げたので、
また電話してきたのだろうと。
そして、
テーブルの上においてある子機を手に取った。
「はい。高梨です」
「お義姉さん?」
上ずったような浩司の声だった。
「浩司くんね?」
「はい・・・」
「どうしたの?」
「・・・」
「黙ってちゃわからないわ」
「あの・・・お義姉さん・・・」
「なに?」
「あの・・・怒らないって約束してください」
浩司の声は緊張しているようだ。
「軽蔑しないって約束してください」
「なにを? それだけじゃわからないわ」
「お願いです。約束してください・・・」
浩司の声は、
消え入るように小さかった。
「わかったわ。約束するから言ってごらんなさい」
「あの・・・あの・・・ぼく・・・」
浩司は、ためらっているようだった。
「ちゃんと約束するから言って」
「ぼく、オナニーしてるんです」
浩司は、
小さな声で思い切ったように一気に話した。
さすがに淳子は驚いたが、}
男性のそういうことは
当然理解できている。
自分もしているのだから。
「男の子だったら、当然でしょう?」
「・・・」
「みんなしていることでしょう?」
「ぼくのこと、軽蔑しない?」
「当たり前でしょう!」
淳子は、
わざと大きな声ではっきり言い放った。
「よかった・・・」
浩司は少し安心したようだ。

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